デジタル遺産の探し方【Ⅱ】 – 暗号資産、ステーブルコイン、NFTの探し方

前回記事では「デジタル遺産の探し方【Ⅰ】‐暗号資産、ステーブルコイン、NFT等はどのように保管される?」として、ブロックチェーン上の資産がどのように保管されているかについて解説しました。

ブロックチェーン上の資産の保管に特殊性があり、従前の金融資産と同レベルで資産の調査や相続手続きを考えることはできないというイメージはもっていただけたのではないでしょうか。

本記事では「デジタル遺産の探し方【Ⅱ】」と題して、暗号資産、ステーブルコイン、NFT等のブロックチェーン上の資産を相続人の立場から実際にどのようにして探していくのかを確認していきます。

なお、本記事は相続や一定の法的知識を有する士業や、相続に関連する業務を行う事業者の方向けに解説する内容となっています。

更に内容をかみ砕いた解説は別途掲載予定ですので、本記事の内容が難しい方はそちらをお待ちください。

目次

本記事で対象とするデジタル資産

前回記事に引き続き、本記事ではブロックチェーン上で発行・管理される以下のデジタル資産を説明の対象としております。

  • 暗号資産
  • ステーブルコイン
  • NFT(Non-Funjible token、非代替性トークン)
  • セキュリティトークン

暗号資産交換業者に管理されている場合(カストディアルウォレット管理の場合)

遺産を探す立場からすると、暗号資産交換業者(取引所)において暗号資産等が管理されている場合とそうではない場合とでは、調査の難易度が異なります。

暗号資産交換業者によって管理されている場合は、おもに以下の方法で調査が行われます。

  • 金融機関の口座からたどる方法
  • PCやスマホからたどる方法

1つずつ見ていきましょう。

金融機関の口座からたどる方法

暗号資産交換業者において管理されている場合は、オンラインの金融機関口座や証券会社の口座を開設している場合と大きく異なるものではありません。

そして、国内の取引所では以下のように銀行口座と連携し、法定通貨である日本円と暗号資産を交換する役割を果たしています。

入金出金
①金融機関から取引所の口座へ日本円を入金
②取引所へ日本円から暗号資産へ交換(オンランプ)
①暗号資産を日本円へ交換(オフランプ)
②日本円を金融機関の口座へ出金

そのため、被相続人名義の金融機関口座の取引履歴を確認し、特定の取引所への入金又は取引所からの出金が確認された場合、同取引所のアカウントを有している可能性が高いということになります。

PCやスマホからたどる方法

国外の取引所の場合は入出金用の国内金融機関口座が存在しないため、以下の項目を確認して、取引所の把握を行います。

  • 電子メール
  • スマートフォンのアプリ・ブラウザ履歴やお気に入り登録
  • PCのアプリ・ブラウザ履歴やお気に入り登録

スマートフォンのアプリについては、取引所アプリのみならず二段階認証サービスのアプリをチェックすることが有意義です。取引所の要請により二段階認証の設定を行っている場合があるためです。

以上の調査によって、被相続人が利用していた取引所が判明した場合、同取引所から残高や取引履歴を取り寄せて、当該取引所における残高や他のウォレットに移転された暗号資産が存在しないか確認します。

暗号資産交換業者に管理されていない場合(ノンカストディアルウォレット管理の場合)

暗号資産交換業者に管理されていない場合、すなわち、被相続人が自身の管理ウォレット(ノンカストディアルウォレット)に暗号資産等を保有している場合、発見・確認・分析の難易度が上がります。

ノンカストディアルウォレットにはオンランプ・オフランプの機能はないため、日本の金融機関口座との入手金取引はありません。

他方で、取引所のウォレットから暗号資産の状態で移転されることはあります。そのため、取引所のウォレットと頻繁にやり取りが存在するアドレスは、当該被相続人自身が管理しているノンカストディアルウォレットの可能性があります。

その他、ノンカストディアルウォレットの存在の把握については、被相続人が利用していたスマートフォンやPCを確認することになります。具体的な確認ポイントは以下のとおりです。

  • 電子メール
  • スマートフォンのアプリ・ブラウザ履歴やお気に入り登録
  • PCのアプリ・Google Chrome拡張・ブラウザ履歴やお気に入り登録

他の切り口としては、被相続人がノンカストディアルウォレットのパスワードやシードフレーズ(ウォレットを復元することが可能なリカバリーフレーズ)、秘密鍵の情報をメモやパスワード管理ツールに保管していた場合、これらの情報からウォレットに辿り着くことも考えられます。物理メモについては貸金庫も確認しましょう。

以上の調査によって、被相続人のノンカストディアルウォレットを特定できた場合、その中身の暗号資産等を確認することである程度の資産が確認できます。しかし、そのウォレットアプリ上にすべての資産が表示されているとは限らない点に注意が必要です。

当該ウォレット上で表示されるブロックチェーンやトークンを個別に追加していく方法もありますが、当該ウォレット内の資産を一覧することができるサイトに接続する方法が簡便でしょう。

ブロックチェーン上のデジタルアセットのポートフォリオ表示サービスも複数ありますが、メタマスクもポートフォリオサイトを用意しているため(https://portfolio.metamask.io/)、ウォレットがメタマスクの場合は、こちらの利用もおすすめです。

出典:MetaMask Portfolio

スマ-トフォンを調査する際の注意事項

スマートフォンには、取引所やウォレットのアプリの他、二段階認証アプリが存在する可能性があることに加え、メールその他メッセージから関連情報をチェックすることになるため、暗号資産等の調査に関しては、スマートフォンを確認することが必須といえるでしょう。

大前提として、相続手続き処理の中でもスマートフォンについて通信会社との契約を解約するのは、調査確認等が終わってからにしましょう。

そして、多くの場合、スマートフォンには生体認証やパスコードロックがかかっています。確度の高いパスコードを把握できている場合やパスコードのメモを発見した場合を除いて、むやみにパスコード入力することは避けましょう。設定次第では、一定回数の入力誤りにより初期化となり、デジタルアセットへのアクセスが完全に絶たれてしまいます。

スマートフォンロック解錠を行う専門業者(デジタル・フォレンジック業者)も一部存在しておりますので(但し実際に解錠できるか否かは条件次第となります)、パスコードを把握できていない場合には速やかに相談することが必要です。

まとめ

本記事では暗号資産、ステーブルコイン、NFT、セキュリティトークンなど、ブロックチェーン上の資産の探し方を具体的に解説しました。

カストディアルウォレット(暗号資産取引所など)に保管されている資産は、より伝統的な金融資産に近い扱いとなり、各取引所の相続手続きに従って対応することになります。

ただし、海外取引所を含め複数の取引所を利用しているケースも多いため、資産の把握には注意が必要です。

他方で、ユーザー自身が管理するノンカストディアルウォレットを理解することは、ブロックチェーン上のデジタル資産を学ぶうえで欠かせません。

このタイプのウォレットでは相続時にも特有の課題が生じます。資産の把握、アクセス、移転、処分を全てユーザー自身で行わなければならず、秘密鍵、シードフレーズがわからなければ遺産を回収できないという特性は、相続手続きにおいても決定的に重要です。

デジタル遺産でお困りの方は早期に弁護士に相談を

デジタル資産については、財産把握や管理・処分の方法、そして財産評価に特有の問題があります。

そのため、生前対策を行う場合にも、相続した場合にも、デジタル資産に精通した専門家のサポートをいち早く受けて整理を行うことが重要です。

tou法律事務所では、web3関連事業やデジタル資産の相続に注力して取り込んでおります。また暗号資産に精通した税理士と緊密に連携して解決にあたることが可能です。

ぜひお困りの方はお気軽にご相談ください。

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次